朝起きると妻の階段を登る足音が聞こえてくる。
”まっちゃん、起きる時間ですよー”
小学校に入学する前は、速攻で起きることが出来た我が息子まる。
最近はぐず寝してる。
”あともうちょっと”
完全に俺に似てしまった。
ぐずぐずも3分くらいすると妻の声掛けもだんだん不機嫌になる。
”もう知らない、今なら抱っこして階段を降りるのに”
すると、まるちんはおもむろに起きだすから面白い。
俺はいつものように頭をなでなでして、チュッとしようとしてかわされる。
そして、妻に抱っこされて階下へ行く二人。
小学校4年生っていう事実を忘れてしまいそう。
俺はというと二度寝。
ここから起きるまでの30分くらいが至福の時間。
下からバンバンサッカーボールを蹴る音が聞こえるのも差支えないレベル。
スマホ中毒の俺からすればいなすのはわけない。
7時50分にまるは学校に行く。
俺はそれを見計らって下に行き、行ってらっしゃいのチュッを仕掛けるが大体かわされる。
仕事に行って帰ってくるとまるちんとおしゃべり。
その日あったことを聞く。
気分が乗ってくると例のかけあいを俺は出す。
”まっちんくん、まっちんくん、まるちんくんっ、まーるのちんくんっ”
すかさず
”まっちんくん”
というアンサーソングがまるから返ってくる。
他にはこんなありきたりな歌を俺が歌うこともある。
”まったん、まったん、さいこー、あそこもさいこー
まったん、まったん、さいこー、あそこもさいこー
あそこ、あそこ、あそこもさいこー”
断じて言うがあそことは左肩周辺を指している。
そのあたりも毎回まるに伝えている。
まるは下腹部あたり指すのだが、俺は認めない。
寝るときの合言葉はこうだ。
”まーるちん、まーるちん、まーるー○○、まる○ー○くん。
ねーむれ、ねーむれ、まーるー○○、まる○ー○くん”
これを言いながら、おなか辺りをトントンするとあら不思議。
今まで元気にしゃべっていた息子がコトりと寝てしまう。
まるが大きくなった時にパパから大事に大事に育ててもらったという
記憶の一部になれたらなという想いがある。
ある晩、まるが大きくなって結婚式を挙げるシーンについて妻と話した。
両親への手紙がもしあればまず泣く。
これは確定している。
次に親からのアンサーソング。
もうね、号泣号泣。
俺なりに世間体というやつを気にして、多少動画も使ってさ、面白おかしく感動を演出しようと考えるよ。
でもね、最後の方の言葉は言葉になってないという自信がある。
可愛い可愛い息子の晴れ舞台という想いと小さな頃の思い出が複雑にぶつかりあう。
パパとママからの完全なる卒業。
これから年に数回しか会えないかも知れない。
もう涙しかない。
大好き、大好き、大好きなまるちゃん。
あれだけいい子いい子しながらチュッチュッしてたまるちゃん。
ギュっと抱きしめてくれたまるちゃん。
何気ないギャグで大笑いしてくれたまるちゃん。
いつも隣にいてくれたまるちゃん。
この記事書きながら大号泣。
俺ってやばいくらい子離れ出来ない体質かも。
時が止まって欲しいといつも思ってる。
でもそうはいかない。
いつか子供は親からははばたくし、はばたかなければいけない。
俺は誰かにこのことを聞いて欲しかった。
そんな葛藤を抱えながら俺は明日も仕事に行く。